ジミ・ヘンドリックスのライヴ・アット・ザ・フィルモア・イースト

どうしても聞き流せない音楽というのはなんぼかありますね
BGMにならないんです。耳が張り付いて離れないと。
さっきキャベツとトマトのミートスパを作りながら(嫁はジムでルーシーダットン)、
聞いてたんですけど『ジミ・ヘンドリックスのライヴ・アット・ザ・フィルモア・イースト』、
動揺して食卓に運ぶ際、ミートソースを傍のクッションにこぼしちまいました。
ティシューでとんとんしながらですね、スパが伸びるのを気にしつつもですね、
耳は剥がれないんですよねスピーカから。

僕が聞いているこれは、99年に出た2枚組みのやつ。
disc1がとにかくハンパない。
1曲目ストーン・フリーから恐ろしく重たい。
耳に馴染んでる曲だからなおさら、この時の演奏がとんでもないことが
分かる。
剥き出しの心臓みたい。
ずーっとハチキレそうなくらい脈打ってんだけど、
4曲目イザベラからマシンガンのあたりはもう
ギター「が」操っている感じ。ジミも場も。
これ、誇張じゃないっすよ。聞いてみてよ。
すごいから。
マシンガンのギターはもうギターの音してないっすよ。
うおーん、うおーんって。機関銃で撃たれて死んだ兵隊達が
泣き叫んでますよ。
宮崎駿の映画の、森が全体でおののき泣いてる声に似ている。
案外キメなんかはすごくきっちりしてんだよね。
キメを飛び越えていくギターが龍みたい。ドラゴンっぽい。
うねうねうねっと、駆け上ってくんだ。

ときどき僕、
「人間存在包む薄い膜」みたいなん、
まあそのー、リミットというか
「これより向こうへ行っては危ない」という境目、
そういうのを意識することあるんですけど、
ジミは破ってしまってますね、この時。
風穴を開けちゃったら、あとは虚空に、
どこまでも吸い上げられてくのみです。
ほんで、
やっぱり戻って来れなかった。

貴重な、とんでもない瞬間だ。よくぞこんだけ良い音で録ってたな。
録られるべくして、聞かれるべくして残ったんだな。


天気:風強しうじきつよし(は最近見ないですね)