みかん

半年、いやもっとかかったかも知れないけど、
やっとカフカの『城』を読み終えました。
ひどくおもしろいけど、2ページ読むと圧倒的な睡魔が襲うという、
極めてやっかいで最高な小説でした。
永遠にみかんなんです。この小説。遺稿で。中途でカフカは筆を折っています。
みかんである事が、この小説を完璧にたらしめている、気がする。
みかんでなければならない、のかも。

にんげんの存在、というものに深く降りていくと、
その底の知れなさに恐れおののくものです。
見えないものは怖い。
近づいているのか、遠ざかっているのか
なにしろ見当つかないから怖い。
「ここはどこ?」「あなたはだれ?」
みんな車窓の風景よろしく、
ぼうっと現れては消えていきます。

まともにそんな果てのない怖さに相対するには、
強度の耐性か、意識的な徹底した無関心のどちらか、
またある場面では、その両方がどうしても必要です。
「自分を保つ」ことは、とても難しい。
難しいなあ、という思いから、
まあ僕は曲を作ったりもしています。ぼやきみたいなもんです。
今後よりその描写の精度はあがるだろうし、
そうあるべく努力もしていますが、
最初から、僕が曲に込めた主題は頑として変わらずそこにあるわけです。
ぼやきです。

カフカも、優れた手法で、ぼやいています。
真っ向からぼやくと、結果として、
それはぼんやりとした堂々巡りな、
みかんである事がふさわしいようなものになるわけです。
とにかく、ぼんやりしてるでしょう?「それ」って。


天気:晴れ
BGM:ビョークの新譜